緊急事態宣言は誰の働き方を変えたか

『コロナ禍における個人と企業の変容-働き方・生活・格差と支援策(樋口美雄・労働政策研究研修機構編)』, 慶應義塾大学出版会, 2021. [書籍情報]

共同研究者: 大竹文雄(大阪大学)

要約

本研究は新型コロナウイルス感染症の流行を防ぐための小中高の休校措置や緊急事態宣言措置の実施によるテレワークの導入が推進されたこと背景に、どのような人にテレワークが定着したか、そしてそのような人の生産性にどのような影響を与えたのかをJILPT調査を用いて検証した。主な結果は以下の通りである。第一に、緊急事態宣言解除後、仕事の評価基準が明確である労働者がテレワークで従事している傾向がみられた。第二に、緊急事態宣言の発令でICTによるビデオ会議システムを利用する機会が増えたと考えられる労働者(会議や打合せが多い仕事やデスクワーク中心の仕事)が緊急事態宣言解除後もテレワークに従事している傾向があった。第三に、日本の伝統的な雇用制度である「メンバーシップ型」の人事管理制度はテレワークを阻害している傾向は観察されなかった。第四に、テレワークの周辺環境が悪い労働者(同居家族の存在やインターネットなどのテレワーク設備)はテレワークに従事していない傾向があった。第五に、観察不可能な要因で生じるバイアスの影響を差し引くと、テレワークは月収に影響を与えない一方で、労働時間は経時的に負の影響を与えることが予想される。

ディスカッションペーパー

  • Discussion Papers in Economics and Business (大阪大学経済学研究科), 2021. [本文リンク]